2016-04

歯科医院の歴史あれこれ

紀元前2000年、古代バビロニアでは、歯の痛みなど、口の病気はアヌという神に祈りをささげる方法で治してきました。
いわゆる加持祈祷ということになるのでしょう。

14世紀のヨーロッパ。歯医者さんはなんと移動スタイルをとっていたのだとか。
街中を移動しながら、歯磨き粉を売り歩いていたようです。
そのついでに悪い歯を抜く専門の「歯抜き屋さん」という名前で呼ばれていたようです。
今のように患者さまが歯医者に足を運ぶのではなく、歯医者が街を歩いて商売をしていたというのが面白いですね。

イタリアでは理髪師さんが歯を抜いたり、口の清掃を行っていたといいます。
街を練り歩くあやしい歯抜き屋さんよりはましな気 がしますが、どんな治療だったのか考えるとまだまだ怖いですね。

日本では大宝律令により、医療として耳や目、歯科などが確立しました。
中国、隋の時代の書物をもとにして医学の確立とともに歯科も同じように体系づけられたということになります。
国宝になっている書物「醫心方」に朝夕二回歯を磨けば虫歯になりません、とか食事をしたら数回うがいをすれば虫歯になりませんとの記述があります。

歯科は、鎌倉時代から咽喉科を交え、安土桃山時代に口歯科として誕生したのです。
この口歯科は修業を終えてから口中科という専門医として活躍しました。
室町時代には入れ歯の専門医も誕生したようです。

これらの歴史を踏まえ、現在のような一般的な歯科治療がなされる場所 が設定されていきました。
正座した患者さまに対面する様子で歯の治療をしている絵画なども残っていて、現在のような立派なチェアが用意されるようになるのはもう少し後のお話です。
街を練り歩いていた歯抜きやさんが聞いたら、現代の革張りの患者さまのソファを置いた歯科医院に驚くことでしょう。

西洋の入れ歯と比べ、日本の入れ歯技術は素晴らしかったということも歯科業界では有名な話です。
西洋では入れ歯を骨や象牙などを材料にして、見た目を重視して作っていました。
噛むことはあまりできなかったので、入れ歯を外して自宅で食事を済ませてから、見た目重視のこの入れ歯を装着してパーティに出席していたといいます。
ジョージワシントンも金と象牙を材料にした入れ歯を使っていて、その実物の入れ歯が残っています。
しかし、この骨や象牙の入れ歯はとても悪臭を放つために使いにくかったと言われています。

一方、日本の入れ歯はツゲなどの木でできていて、良くあごにくっついたの で、噛むことに優れていたということです。
一年間の生活費1人分に相当するほどの値段だったと言われています。
しかし、歯の部分もすべて木でできていますから、欧米の見た目重視の入れ歯に比べると審美性は大変劣っていることになりますね。

仏像彫刻の傍ら、入れ歯の作成をしていた仏師が入れ歯のルーツで、親分、子分という関係で修業をして技術の習得をしていたのだそうです。
現在でも入れ歯の調整は大変奥が深いものなのですが、歴史を見てみるのも面白いですね。

2016-04-12 | Posted in デンタルニュースComments Closed 

 

抜けた歯のおはなし

成人の歯を抜くことになった時には、その部分はインプラントや、ブリッジ、入れ歯などで空間を補わなくてはいけません。
両隣りの歯が倒れてきたり、対合している噛み合うべき歯が相手を失ってのびてきて、噛み合わせに不調和をもたらすなど問題が起きてくるからです。
歯を抜くという治療はその歯に対して最終手段のようなさみしい結末なのですが、その抜いた歯、ってどうなるかご存知ですか?
ぬけたはのおはなし
虫歯にやられて真っ黒、歯冠といわれる普段お口の中に見えているはずの部分が崩壊して、見るのも恐ろしいくらいの形になっていたり、悪臭を放つほどの場合は、感染性医療廃棄物として有料で歯科医院が処理をしています。
時々、きれいな親 知らずや、乳歯に関しては持って帰りたいという要望がありますので、患者さまにお渡しすることがあります。
きれいな歯であっても患者さまがお持ち帰りを拒否する場合には、衛生的に処理をしてから歯の勉強をしている歯科大や衛生士学校で実習などに使われるケースもあります。

乳歯は成長を喜び、記念に箱に入れたりすることも増えてきていますが、日本では上の歯は縁の下に投げて、下の歯は屋根に向かって投げるという言い伝えがありますよね。
次に生えてくる歯が伸びる方向に思いっきり投げるということのようです。
国によってもいろいろな習慣があり、とても面白いのでご紹介しましょう。

中国やタイ、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどのアジア圏では日本とほぼ 同じような習慣があるようですが、韓国やスリランカ、トルコは上の歯も下の歯も屋根に投げるそうです。
逆にマレーシアでは上の歯は上の方向へ、下の歯は下に投げるようです。

アメリカ、イギリス、多くのヨーロッパ諸国やカナダやメキシコ、アルゼンチン、ブラジルなどではコップや箱などに入れておくと歯の妖精がお金に換えてくれるという言い伝えがあるようです。
クリスマスではないですが、両親が朝までにお金を入れておくのでしょうか。
新しい歯は、古い歯がある方向に伸びると信じられているからです。
コスタリカは、抜けた乳歯を加工してイヤリングにするそうです。
エジプトは太陽に向かって投げるそうです。太陽神にお願いするのでしょうか。
インドは土にかえすのだそうです。
それぞれ宗教や慣習が背景にありながらも、それぞれの方法で歯の健康を祈っているのですね。

近年マンションに住んでいる人や縁の下がない工法のお家も増えてきたため、日本でも上の歯を投げる場所が無くなって来てしまいました。
そんな理由から子供の成長の記念に可愛いデザインの乳歯保管ケースというのが多く発売されています。
成長過程で抜けた歯はとても おめでたいもの。でも虫歯で歯を抜くということだけは極力避けたいものですね!

2016-04-06 | Posted in デンタルニュースComments Closed